2019年度 第五回GBSセミナー(10/28実施)

講演者:小暮 敏博     教授 
日時:10月28日(月)17:30~
場所:理学部1号館710号室
演題:Visualization of Clays at the Atomic Scale
要旨:粘土鉱物は造岩鉱物の風化生成物として広く地表あるいは海洋底を覆っており,地球表層の物質循環あるいは生命・人間活動に深く関連するキーマテリアルと言うことができる.はたして粘土鉱物とはどのような構造を持ち,どのようにして形成されてきたのか? この物質には多くの未解明の問題が残されている.粘土鉱物の多くは層状珪酸塩鉱物(phyllosilicates)という非常に異方的な構造をもつ故に,他の鉱物には見られない独特の特徴を示すことになる.そのひとつが多くの粘土鉱物は”3次元周期性を持たない”ということである.この3次元周期性の消失という問題のため,これまで人類が結晶構造の解析に用いてきた回折(Diffraction)的手法だけでは,粘土鉱物の真の構造を解明することはできない.そのため,我々は透過電子顕微鏡による粘土鉱物中の原子配列の直接観察に挑むことになる.しかしそこには電子損傷という大きな壁が立ちはだかっており,決して安易な道ではない.本発表では,演者が大学に籍を置いてから四半世紀の間に進めた電子顕微鏡による粘土鉱物の構造の”可視化”によって,粘土鉱物の構造と成因についてどのようなことがわかったのか,その一部を紹介したい.