2020年度第五回GBSセミナー(12/21 実施)

日時:2020年12月21日(月)18:00-

演題:「福島原発事故により放出された放射性セシウム含有微粒子の内部構造と物理化学的性質」

講演者:奥村大河

要旨:2011年3月に発生した福島原発事故によって大量の放射性物質が環境中に放出され、周辺地域に汚染が広がった。ガスとして放出されたと考えられる放射性セシウムは雨滴とともに地上へ落下し、主に層状珪酸塩等の土壌中の鉱物に収着されたと考えられている。これとは別に、放射性セシウムを含有した珪酸塩ガラス微粒子CsMP(radiocesium-bearing microparticle)が損傷した原子炉内で生成され、環境中へ放出された。CsMPは概して数ミクロン以下の球形を呈し、上記の放射性セシウムを収着した鉱物に比べて単位体積当たりの放射能が非常に高い。またサイズが小さく大気中を浮遊しやすいため、関東を含め広範囲に運ばれ沈着した。発表者らの研究グループでは、CsMPの組成や内部構造に加え、その環境動態に関連する熱特性や溶解特性等の物理化学的性質を調べてきた。さらに最近では、放射性セシウムを収着した鉱物粒子とCsMPの酸性溶液中での溶解特性の違いを利用し、CsMPの存在量を見積もる手法を提案した。本発表では、これまでに得られたCsMPに関する知見を紹介する。