2022年度第二回GBSセミナー(2022/5/30 18:00@Zoom)

日時:2022年5月30日(月) 18:00~19:00(発表45分,質疑15分)

講演者:高橋嘉夫 教授

場所:Zoom開催

演題:粘土鉱物中の鉄の酸化還元反応の地球惑星科学における多面的意義

要旨:
粘土鉱物(主にスメクタイト)など層状ケイ酸塩の主に8面体層中に含まれる鉄のFe(II)とFe(III)の変化は、Stucki et al. (1984)の最初の論文以降、依然として多くの研究がなされてきている。その理由は、その反応機構が未だに十分に解明されていないためである一方、粘土鉱物はあらゆる地球惑星科学・環境科学試料中に存在し、その影響が多岐に渡る可能性があるからである。我々は主に、XAFS法による検出を基盤にしながら、その酸化還元反応が様々な現象に与える影響について考察することを試みている。主に以下のトピックスについてお話ししたい(トピックスの順番は、扱う環境として酸化的環境から還元的環境の順番に並べた)。
(i) 土壌中の酸化還元反応における粘土鉱物中のFe(II)/Fe(III)比変化の占める位置づけと微生物活動への影響(M1・清水優希さん)
(ii) 粘土鉱物中のFe(II)/Fe(III)比変化が粘土鉱物の吸着容量に与える影響(PD・田中雅人さん;M1・田中啓資さん)
(iii) 地層中のウランの酸化還元状態に及ぼす層状ケイ酸塩の影響(2021年度修士修了・竹田早英桂さん)
(iv) 隕石・リュウグウ試料中の層状ケイ酸塩の鉄価数のEh計としての意義や非生物的有機物合成への関与(D1・河合敬宏さん)

今後は、これらの基盤となる層状ケイ酸塩中の鉄価数比とEhの関係(Gorski et al., 2013)を蛇紋石に対して求める研究を進めたいと考えている。